レスキューロボットコンテストのフィロソフィーとストーリー

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2000年11月15日制定
2006年1月5日改定

レスキューロボットコンテスト(レスコン)には、レスキューに関する社会的理解を深めていただく一手段としての意味を付しています。 そのため、このコンテストには次の原則があります。

原則:レスコンの背後には、常に現実のレスキュー活動が控えています。

したがって、以下に示す基本姿勢が生まれます。

1)他のチームとの相対的な勝敗は第一ではありません。
あくまでもあらゆる状況下において自己ベストを探求する競技だといえます。レスコンでは、災害救助活動に対する社会的理解の探究、 技術的な成果の社会への還元、創造性を育む場や機会の提供、新しい研究テーマや製品アイデアの発掘、 などが重要であると考えています。競技形式をとるのは、そのことによってお互いの技術やアイデアを切磋琢磨するためです。

2)緻密なルールや制限はあえて設けない方針です。
なぜなら、現実のレスキュー現場は千差万別で、基本的にはその場での合理的・人道的判断によって行動しなくてはならないからです。 あらかじめ定められた現場であらかじめ定められたルールの下での行動にはならないからです。

3)2)の結果、競技上迷いが生じることがあります。
たとえば、ルール上は禁止されてはいないがこういう行動はとってもいいのだろうか、という類の迷いが生じるかもしれません。 そのときには「現実のレスキューではどうなのだろうか」と考えることで判断していただければと思います。

これらの基本姿勢はすべてレスキューに関する社会的理解を深める活動につながる重要な点ですが、 特に2)、3)は、競技者に自由度を与え、自分で判断もしていただこうという点で重要であると思います。自分で判断するとき、 必ず現実のレスキューのことを考えざるを得ない状況になり、 そのような考えに至ることが、まさにレスコンのねらいでもあります(社会性を一つの軸にした活動たるゆえんです)。

上の基本姿勢は、理想像として常に念頭においておきますが、 一方ではレスコンは一般の方々が参加する競技会という側面も有しています。そのため、以下の制限を設定します。

制限1) 競技者や観客の安全を保障しなくてはなりません。

たとえ現実のレスキュー現場で行われる可能性があるにしても、ロボットなどが暴走したときに、 競技者や観客に危険を及ぼす可能性がある手段はできる限り避けましょう。

制限2) 競技会場の破壊は避けましょう。

実験フィールド内の道路上やエリア(道路で囲まれたブロックを構成する小区画のこと)にはガレキが配置されています。 現実のレスキューの現場においては、このようなガレキを破壊することにより対応する場合があります。 しかしながら、これらのガレキは各競技において同じものを使用するため、競技の運営上やむを得ず、ガレキを破壊する行為を禁止しています。

 上記の制限2)は競技の運営上から出た制限ですが、これをより現実的側面から正当化するには次のような事実が参考になります。

 事例)阪神・淡路大震災では、以下のようなことがありました。

(1) 災害現場では私有地内(家が建っていた場所など) の物品―例えそれがガレキと化したものであっても―には勝手に触ってはいけない(触ってほしくない)。 私有地内に無断で入ることも好ましくない。
(2) 道路上のガレキは基本的には除去することが望ましい。もちろん、その中に被災者がいないことが前提である。
(3) 除去したガレキの置き場所はよく考える必要がある。私有地に持ち込む考え方は、(1)に違反する。

 このことをレスコンに置き換えますと、次のようになります。

・エリアは「私有地」とみなしています。 したがって、エリア内にあるガレキをむやみに壊したり乗り越えたり、除去したガレキをエリアに積んだりしてはいけません。

なお、上記ではガレキを除去することを道義的な意味により推奨していますが、競技運営上、ガレキを除去したことに対する定量的な評価は行いません。

実は、レスコンの理想像を追求することと競技会としての成り立ちを追及することには、場合によっては矛盾することがあります。 この矛盾をどこで妥協するかが重要です。結論は出ていません。これからも悩みながら進めてゆくのでしょう。


以上のことを踏まえて、考え出したレスコンのストーリーを以下に示します。

ここは「国際レスキュー工学研究所」だ。この研究所では、レスキューに関する技術の評価と訓練のために、 競技形式で機材や運転の技術の高度化が行われている。 研究所内には、大地震で倒壊した市街地を模擬した1/6スケールの実験フィールドが構築されており、 いままさにレスキュー訓練が開始されようとしている。

状況設定は次のとおりである。

状況1)ガレキの中には被災者を模擬したレスキューダミーが数体設置されている。
状況2)幸いレスキューダミーの設置場所はおおよそわかっている。 ただ、もしかしたら他の場所にも埋没していないとも限らない。
状況3)二次災害のおそれがあり、人間が立ち入ることができない。

そこで、遠隔操縦のレスキューロボットの出動だ!
ロボットから送られてくる映像をもとに、一刻も早く、ガレキや障害物を取り除きレスキューダミーを探し、優しく助け出し、安全な場所まで運ぶことが今回の任務である。