レスキューロボットコンテストのフィロソフィーとストーリー

   
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2000年11月15日制定
2002年11月26日改定
2006年1月5日改定
2020年12月4日改定

レスキューロボットコンテスト(レスコン)には、レスキューに関する社会的理解を深めていただく一手段としての意味を付しています。そのため、このコンテストには以下の原則とコアコンセプトがあります。

原則:「レスコンの背後には、常に現実のレスキュー活動が控えている」
コアコンセプト:「やさしさ」

したがって、以下に示す基本姿勢が生まれます。

1)他のチームとの相対的な勝敗が第一ではない
レスコンは、様々な災害状況下においてベストなレスキューシステムのアイデアを探求する競技です。レスコンでは、災害救助活動に対する社会的理解の探究、技術的な成果の社会への還元、創造性を育む場や機会の提供、新しい研究テーマや製品アイデアの発掘、などが重要であると考えています。競技形式をとるのは、そのことによってお互いの技術やアイデアを切磋琢磨するためです。

2)多様な災害状況を考える
災害時には、様々な状況が起こります.そのため、レスキュー隊員は数多くの状況を想定したシナリオを用意し、日々訓練を行っています。多様なシナリオの中で、何をすべきか、それらの優先順位はどうすべきかを考えてください。

3)現実のレスキュー現場を想定し柔軟に対応する
たとえば、ルール上は禁止されてはいないがこういう行動はとってもいいのだろうか、という類の迷いが生じるかもしれません。そのときには「現実のレスキューではどうなのだろうか」と考えることで判断し、柔軟な発想で対応してください。

基本姿勢はすべてレスキューに関する社会的理解を深める活動につながる重要な点ですが、特に2)、3)は、競技者に自由度を与え、自分で判断もしていただこうという点で重要であると思います。自分で判断するとき、必ず現実のレスキューのことを考えざるを得ない状況になり、そのような考えに至ることが、まさにレスコンのねらいでもあります(社会性を一つの軸にした活動たるゆえんです)。


さらに、レスコンは基本姿勢と共にレスキューに対する「やさしさ」を考え、具現化する場でもあります。レスコンにおける活動を通した「やさしさ」の具現化が、レスコンのコアコンセプトとなります。要救助者に対して以外にも、視野を広げて「やさしさ」を追及してください。レスキュー戦略やロボットを設計する際、以下に挙げる「やさしさ」をどのように表現するかを考えてください。
(a) 救助/救出方法における要求者へのやさしさ
(優しさ,思いやり,配慮,親切さ、Consideration, Kindness, Tenderness)
(b) 救助救出機構,耐故障性,メンテナンス性などのやさしさ
(易しさ,配慮、Consideration, Simplicity, Robustness, Toughness)
(c) ロボットを遠隔操作する際のやさしさ
(配慮,易しさ、Consideration, Ease, Simplicity)
(d) 観客への説明のやさしさ
(平易さ,明解、Clarity, Simplicity)


レスコンの基本姿勢およびコアコンセプトは理想像として常に念頭におきますが、一方で、レスコンは一般の方々が参加するイベントという側面も有しています。そのため、以下の制限を設定します。

制限1) 競技者や観客の安全を保障しなくてはなりません

たとえ現実のレスキュー現場で行われる可能性があるにしても、ロボットなどが暴走したときに、競技者や観客に危険を及ぼす可能性がある手段はできる限り避けましょう。

制限2) 競技会場の破壊は避けましょう

競技会場内には障害物が配置されています。現実のレスキューの現場においては、このような障害物を破壊することにより対応する場合があります。しかしながら、これらの障害物は各競技において同じものを使用するため、競技の運営上やむを得ず、障害物を破壊する行為を禁止しています。

レスコンの理想像を追求することと競技会としての成り立ちを追及することには、場合によっては矛盾することがあります。この矛盾をどこで妥協するかが重要です。結論は出ていません。これからも悩みながら進めてゆくのでしょう。


以上のことを踏まえて、考え出したレスコンのストーリーを以下に示します。

ここは「国際レスキュー工学研究所」だ。この研究所では、レスキューシステムに関する技術に対して、競技形式で機材や操縦技術の高度化が行われている。研究所内には、大地震で半倒壊となったビルや施設を模擬した 1/4 スケールのテストフィールドが構築されており、想定されている災害シナリオに対して、提案システムの評価を行うために、今、まさにレスキュー訓練が開始されようとしている。

災害状況の設定は次のとおりである。

状況1)建物内には、行方不明者(レスキューダミー:通称ダミヤン)が数名いるとの情報がある。状況2)行方不明者の捜索対象は 3 部屋である。
状況2)二次災害のおそれがあり、人間が立ち入ることができない。
状況3)大規模停電が発生している。

そこで、レスキューロボット隊へ出動が要請された。
ロボットから送られてくる映像をもとに、一刻も早く、ガレキや障害物を取り除きダミヤンを捜索発見し、居場所や容体を報告する。必要に応じてショアリングやクリビングなどにより什器や瓦礫などの安定化を図りダミヤンを「やさしく」助け出し、安全な場所まで運ぶことが今回の任務である。