12th/inrevium_cup2_small.png第12回レスキューロボットコンテスト
レスキュー工学大賞の選考について

レスキューロボットコンテスト実行委員会
実行委員長 土井 智晴

第12回レスキューロボットコンテスト競技会本選における「レスキュー工学大賞」の選考について説明します。

レスキューロボットコンテスト(以下、レスコン)は、レスコンのフィロソフィーとストーリー(以下、フィロソフィー)という哲学のもとに開催されている競技会です。そのなかで行われている各ミッションは、レスキューに関する技術の評価と訓練のために行われています。一般的にいえば、学校のテストのようなものです。学校のテストだとすると高得点であることが優れていることになりますが、レスキューロボットコンテストでは、各ミッション等の得点は、与えられたテストに対する結果(評価点)だと考えています。そのことを踏まえて、フィロソフィーを再度確認いただきたいのです。レスコンの原則は、「レスコンの背後には、常に実際のレスキュー活動が控えています。」であり、基本姿勢1)には、「他のチームとの相対的な勝敗は第一ではありません。」とあります。つまり、レスキュー工学大賞は各ミッション等の得点だけで判断するものではなく、フィロソフィーにある原則と基本姿勢に基づき、ファイナルミッションに出場したチームから選出を行っています。

しかし、チームのメンバーからその選出手法がよくわからない、という指摘があり、第9回レスコンからレスキュー工学大賞の選出基準を公開するようにしました。第9回から第11回までは、レスキュー工学大賞選考基準のポイント上位3チームの名から選抜する手順となっておりました。第12回からは、レスキュー工学大賞選考基準のポイントで3チームに絞るのではなく、「レスコン実行委員長、専門審査員、技術評価委員長および実行委員長が認めた特別審査員等によって構成されるレスキューロボットコンテスト各賞選考委員の意見およびファイナルミッションの競技内容で評価された審査員ポイントの素点、レスキュー工学大賞選考資料を参考にして、レスキューロボットコンテスト実行委員長がレスキュー工学大賞を決定する。(参考WEBページ)」としました。このようにして、ファイナルミッション出場全チームからレスキュー工学大賞を選抜できることとしました。この変更は、レスキュー工学大賞受賞チームがファイナルミッション前に限定されてしまい、本来のフィロソフィーに該当したチームを選定できない可能性を排除するためです。

今回の受賞のポイントは、レスコンの実験フィールドだけで良いミッションポイントを取ると言う観点ではなく、“レスコンフィールドに無いようなより一般的な災害地に対しても、高いレスキュー性能を発揮できるだろう”とレスキュー工学的に考えられるチームおよびロボットを有している 「なだよりあいをこめて」チームに与えました。

もう少し具体的に言うと、このチームは「人とロボットのバリアブルスタイル」というコンセプトを提案し、それを実現し、ファイナルミッションで実験しました。この点がほかのチームに優っていた評価ポイントです。

この「人とロボットのバリアブルスタイル」とは、ロボットのグループ編成を災害現場の状況などを見て決めることができる、また、オペレータ全員がすべてのロボットが操縦できるようにコントローラの移動操作法を統一する工夫がされています。さらに、ロボットの足回りやロボットハンドを現場に合わせて自在に変更できるという点も実現しています。

このようにロボットシステムやロボットの構成の自由度を高める取り組みは「なだよりあいをこめてチーム」以外にもありましたが、特にほかのチームより優れた点として評価したポイントは、「バリアブルスタイルについて、彼らのプレゼンテーションの中で明確に述べられていたこと。そして、そのバリアブルシステムのなかの一つであるロボットの移動機構の変更をファイナルミッションの終了約2分前で実際に行った」という点です。このプレゼンテーションでの明言とロボットの足回りを変更して再出動する行動は、私をはじめ多くの審査員が確認し、評価した点です。

私や審査委員長のようにレスキューに関する研究に携わっている工学分野の研究者にとっては、アイデアを提案し、それを作り、そしてそれらを実験により検証する、ことを大切だと考えています。このような工学分野で大切だと考えられている流れを なだよりあいをこめて チームは実践してみせました。よって、第12回レスコンのレスキュー工学大賞はこのような一連の流れを評価して与えました。

なだよりあいをこめてチームは、総合ポイントが8チーム中5位、レスキュー工学大賞選定基準の順位が 8チーム中8位というように各種ポイントで評価すると決して高いチームではありません。しかし、冒頭でも述べましたように、レスコンのフィロソフィーに基づけば、非常に優れた点があったことを各賞選考委員のみなさんに確認いただき、レスコン実行委員長が、レスキュー工学大賞を選定しました。

以上